昨日は子どもの誕生祝いで、サンリオ・ピューロ・ランドなるテーマパークにいってきました。ディズニーランドと比較しては申し訳ないが、アトラクションはすくないし、ショーはいまひとつで、帰路は疲れがどっと出てしまいました。移動が長いし。谷中から多摩センターは、片道1時間以上かかりますから。
テーマパークなんて、子どもがいなければ絶対にいかない場所なので、よい社会勉強になるとは思っています。どんな人たちが来ているのか。何人で来ているのか。何をしているのか。観察しているだけでも、面白いものです。昨日、興味深かったのは、中国人の客が多かったこと。さらに、従業員もダンサーも中国人ばかりであったこと。「なんでだろう?」などと考えるうちに、キティーちゃんやウサハナちゃんとお別れする時間になってしまいました。
さて、会社の話。
月末が近づくと、かならずやることがふたつ。ひとつは、業者さんなどへの支払。これは25日に決めていて、その日が土日または祝祭日ならば、前倒しして支払います。支払ってもらう側の立場で考えた場合、そうしないと資金繰りの計画がたてづらくなってしまいます。
月の末日にやるのが、請求業務。現在、売上の6割強が直販で、そのほかが取次経由となっています。取次分は、すべてJRC経由で出荷しているので、請求もJRC一本。これは、多少の手数料がかかるものの、かなり楽です。残りの6割は、書店ごとに実売分を請求します。
とはいえ、この実売分の計算方法が複雑です。大手書店の多くは、本店レベルのお店で一括して実売数を出していただき、その数にもとづいて請求書を作成します。このパターンだと、毎月ではなく、3カ月に1度くらいの請求になります。たいてい、まとまった冊数の実売があるし、翌月か翌々月にかならず支払ってくれるので助かります。納品月の月末に請求書を出して、売れた分から自動的に支払ってくれる書店もあります。これも助かります。
問題は、大手であっても店舗ごとに直販で契約している場合と、中小書店の実売精算です。正直にいって、JRC経由で取次に流すラインがなかったら、このパターンはいまごろお手上げになっている可能性が高いですね。それくらい手間がかかります。こんな感じでやっています。
毎月末にこちらから各書店に「在庫調査票」をファックスで送る→担当者に記入していただき、返送してもらう→前月の在庫と当月の納品を足して、そこから報告のあった在庫数を引き、実売数を出す→請求書をつくる
書店の方は忙しいので、調査票を出してもなかなか回答がきません。なんといっても、刊行している弊社の本の在庫を、1点ずつ調べるという話ですから……。はやくて1週間、おそいと1カ月後くらいに調査票が届いたりします。たとえば1カ月後に届いた場合、調査票を出した翌々月に請求書を送り、支払われるのはさらに翌々月となったりします。ですから、1月末に「調査票」を出して、5月末に支払われたりするわけです。
それでも、支払ってくれる書店は、まだ良心的です。こちらから何度も催促しないと、半年たっても、1年たっても、支払ってくれない書店もありました。そういう書店の多くは、こちらからお願いして、順次、取次経由に変更してもらっています。実売精算ですから、確実に売れている本の代金を請求しているのに、なかなか払ってもらえないと、どうしても不信感がわいてきます。しかしながら、ここがひとり出版社の弱みでもあるわけです。経理だけやっているわけではないので、どうしても未払いのチェックが甘くなりやすくなるのです。
一般的な出版社ですと、こういった書店への請求業務は取次がやっています。だから、出版社は取次に請求すればいいわけです。取次に請求といっても、たとえば私が以前勤めていたK社などは、10社以上の取次と取引がありました。よって、伝票の集計や請求書の作成は、毎月の大きなイベントになっていました。おまけに、請求しても、請求どおりに支払ってくれません。それでも「まあ、いいや」となるのは、すでに書いたような取次の金融機関的な機能により、「売れてない分の本代も前払いしてくれるから、いろいろあるけど、まあいいか」ということになるからだと思います。
書店が出版社と直販で付き合う場合のメリットは、第一に卸し正味が安いこと、第二に納品が早いこと、などです。出版社側のメリットは、第一に自分が出した本がどこの書店に納品され、どれだけ売れているのかが一目瞭然であること。意外に思うかもしれませんが、取次経由で新刊を配本してもらう場合、お金を払わないと取次は配本先のリストを出版社に提供してくれません。つまり、自分が出した新刊が、どこの書店にどれだけ届いているのかがわからない。変なシステムですね~。第二に実際に売れた本代が、取次をとおすよりも早い時期に支払われる可能性があること(これは書店との契約条件にもよりますが……)。第三に、これがもっとも重要なのかもしれませんが、実売分のみの代金が、支払われるということ。つまり、取次経由で新刊を出した場合、新刊の委託期間はたいてい6カ月です。そして新刊の納品数と6カ月のあいだの返品数を相殺した分が、刊行から8カ月後くらいに取次から出版社に支払われます。とはいえ、さんざん指摘しているように、新刊であっても「注文扱い」で納品すれば、取次は出版社に対して、翌月にその代金を支払ってくれます。売れてようが、売れてなかろうが……。
売れたら売れた分だけ請求し、支払ってもらわないと、売れていないのに売れた気になってしまうという錯覚が起こります。その錯覚が現実だと気づいたときには、売れようが売れまいが新刊を出して「注文扱い」で納品し、翌月に取次に支払ってもらう、という悪循環に陥ってしまいます。その先の悲惨な実情は、すでに書いたとおりです。
というわけで、出版社が書店と直販で付き合うことの最大のメリットは、取次というお化け金融機関を介在させずに、みずからの商品を流通させることであり、売れた分の本代を着実に書店から支払ってもらうことにより、身の丈にあった経営が実現できるということなのかもしれません。
だかしかし、出版社が直販を志せば、取次と同じような業務を、みずからがおこなわなければならない、という苦難が待ち受けています。それを覚悟したとしても、ひとりでできることには限界がある、ということを事前に知っておいたほうがよいでしょう。大先輩のトランスビューは、「ふたり」ではじめたから、いまでもほとんど直販で勝負することができているのだと思います(ちなみに、いまは3人です)。それを、ひとりで真似しようとした私は、いま考えてみると愚かだったように思えます。
いまから少人数で出版社をやろうとする方に助言ができるとすれば、ひとりでやるなら、直販はやめておいたほうがいいということです。ふたり以上なら、直販は可能(あくまでも「可能」)だと思われます。取次へ交渉にいっても、あまりの悪条件を提示されて、きっと嫌な思いをすることでしょう。それでもいいや、という方は取次と付き合ってください。とはいえ、書籍の流通において、別に取次が絶対ではありません。よって、取次の条件が悪いから、直でやってみよう、というのもアリです。アリですが、ひとりでやるのはおすすめしない、ということですね。
流通に関することを書いてきましたが、以上の大前提となることは、書店に対して(読者に対して)魅力的な商品を提供できるかどうか、につきると思います。この点については、日を改めて思うところを書こうと思います。
では、いまから月末恒例、請求書づくりの旅に、いってきまーす! (眠い……)