双風亭日乗

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2006年1月 9日 (月)

伝統のある街の嫁はたいへん!? その2




伝統のある街の嫁がたいへんだという事例のバラエティーは、けっして多彩ではありません。単調です。あくまでも作り話だという前提で、代表的な事例を紹介してみましょう。


舞台は、東京の山手線の内側にある、伝統のある街。そこに、とある古くから脈々と暮らしている家族が住んでいます。その夫婦には、男の子がいます。夫婦は、家の存続のためにも、ぜひ息子に嫁をもらって同居してもらいたい。家を継いでもらうのだから、息子が結婚しても、近隣で別居という形態はゆるさない。あくまでも同居が基本。


息子とある女性が出会う。この女性をAさんとしましょう。恋愛関係になる。Aさんは、家屋の立地がいいし、子どもができても義父や義母が面倒を見てくれて自分は働けるし、財産もそこそこありそう、と思い、ふと「義父や義母と同居してもいいかな……」と思う。ふたりは結婚する。同居がはじまる。


Aさんは、当初は義父や義母のペースに合わせて、二世帯同居生活を送る。町会に顔を出し、伝統文化の保存などに熱心な地域だと感動したりもする。夫の知り合いは、ほとんど幼なじみ。彼らは、息子の家のことから昔の彼女のことまで、何でも知っている。息子の知り合い筋に何かしらの変化があると、すぐに噂になる。当事者不在で、ご近所の悪口をいう。


息子夫婦に、子どもが生まれる。義母と義父は、とてもよろこぶ。男の子であれば、「跡継ぎができた」となおさらよろこぶ。生まれた直後から、子どもの面倒を見るのは義母の役目になる。Aさんの子どもは、子どもとして生まれたというよりも、孫として生まれたようにAさんには見える。


Aさんは、とにかく家にはいたくない。家事のことにしろ、子育てのことにしろ、すぐ義母と言い合いになってしまう。だから、産休が終わると仕事に復帰する。そのほうが義母にとって、孫とのディープな時間を過ごせるのだからいいのかと、Aさんは思っていた。ところが、家を空ければあけたで、義母は「家事をやらない」とか「子育てをやらない」と近所の人たちに愚痴をこぼしている。


こぼされた愚痴は、「Aさんの義母」→「話を聞いた近所の人」→「Aさんの幼稚園や保育園、学校のお母さん仲間」という経路をとおり、「●●って噂を聞いたけど、ほんとなの……」といったかたちでAさんに伝わることが多い。愚痴のみならず、伝統のある街の噂話はやっかいだ。Aさんも日常的に、近所の人、それも古くからこの地域に住む人の噂や悪口を、義父や義母からいやというほど聞かされてきた。脈々と同じ土地に住む人が集まっていると、基本的には近所のことを何から何まで知っているので、ちょっとした変化があっただけでも、話のネタにされてしまう。


ある日、そんな日常に不満を抱いたAさんは、義父や義母と別居しようと夫に相談した。夫は、一応は相談してみるが、たぶん無理だという。案の定、翌日に義母から信じられない言葉をいわれた。「別居したいなら、あなただけ出ていってください」、「子どもは、私の家でしっかりと育てるから」、「養育費が必要だから、あなたの持っているお金は置いていってね」などなど。その家に夫の姉妹がいると、彼女らも義母と一緒に「子どもは、母と私たちが育てますから」などと援軍を出す。


結局、夫の家族との関係にほとほと嫌気がさしたAさんは、後ろ髪をひかれる思いで夫に離婚を申し出た。とにかく、この家にいたらダメになってしまう、とAさんは考えたのだった。離婚の条件は、いつか義母から宣告されたとおりのものになった。親権については、裁判で争ってもいいかと思ったが、行動にうつす前に法的な外堀は、すべて夫の家族により埋められていた。


こうしてAさんは、子どもを引き取ることができず、お金も持ち出せず、まさに身ひとつで夫と離婚することになってしまった……。


以上は、私が知っている事例を元にしてつくった話です。このような基本形に、さまざまなオプションがつくわけです。たとえば、夫の家に入ったら、いつのまにか嫁の預金通帳が夫の家に取りあげられたり……。


こうした状況を見聞きするにつけ、驚き、不思議に思い、不可解だと私は思うのです。そして、伝統のある街に嫁いだ女性は、たいへんだなあと思うわけです。


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