双風亭日乗

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2007年10月31日 (水)

シンポジウムのお知らせです。
アジアに興味がある方々は、ぜひぜひ聴きにいってください!
姜尚中さんの話も聴けますよ~。

国際シンポジウム「『アジア』から考える メディア研究ネットワークの挑戦―東アジアにおける社会情報の新展開(The New Trends of Socio-information in East Asia)」のご案内


 2007年11月16日に、東京大学において、「東アジアにおける社会情報の新展開」をテーマとした日韓米合同シンポジウムが、東京大学大学院情報学環の主催によって、開催されます。
 同シンポジウムは、旧社会情報研究所時代に開催されていた「社会情報に関する日韓シンポジウム」をその前身とし、現在まで毎年継続して行われてきたものです。その開催の意図は、社会科学系の様々な専門領域に渡る東京大学とソウル大学の教員が共同して、学際的なメディア研究、情報社会の活性化、グローバル化を図ることにありますが、今年のシンポジウムでは、ニューヨーク大学の教員も参加し、さらなる議論の国際化を目指します。またこれとあわせて、翌日の17日には、学生間の国際交流の充実化を目指して、日韓米の学生によるワークショップが開催されます。


『アジア』から考える メディア研究ネットワークの挑戦―東アジアにおける社会情報の新展開(The New Trends of Socio-information in East Asia)


開催日: 2007年11月16日(金)
会 場: 東京大学本郷キャンパス(東大鉄門講堂)


概 要:
12時30分 開場(鉄門講堂)
13時00分 シンポジウム開始・吉見俊哉学環長挨拶(司会:北田暁大、同時通訳あり)


第一部 メディア社会のソシオポリティクス
13時20分 Biella Coleman助教授による報告
13時40分 姜尚中教授による報告
14時00分 討論(Kang Nam Jun准教授によるコメント)


第二部 コミュニケーション/身体/メディア
14時20分 Aram Sinnreich客員助教授による報告
14時40分 Youn Sug-Min准教授による報告 15時00分 討論(Kang Nam Jun准教授によるコメント)


第三部 東アジアの情報環境15時20分 Lee Joong-Seek助教授の報告
15時40分 田中秀幸准教授の報告
16時00分 討論(Ted Magder教授によるコメント)


第四部 総括・討論16時20分 会場との討論
16時50分 閉会の辞(Kang Myung-koo教授)

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2007年10月27日 (土)

昨日、赤木智弘さんの『若者を見殺しにする国』が配本となりました。
本日より順次、全国の書店に並びます。

352ページで1500円(税別)の値付けは、正直いって厳しかったです。双風舎でもっとも価格の安い本となりました。大手と違い、弊社のような零細出版社は、そう簡単には1500円なんて値段はつけられないんですよね。

さて、この本をお読みいただくことにより、赤木さんの問題提起や論点に注目したり、内容を読み取ることも、もちろんたいせつなことです。とはいえ、作り手として望むことは、この本を読みながら、なぜ赤木さんのような言説が「この時代」に、または「この時期」にあらわれたのか、ということをじっくりと考えてみる、ということです。

読まれる方の年齢や生活状況、住む地域などによって、「なぜ」の答えが違ってくるかもしれません。でも、その答えが違っていてもいいでしょう。個々の読者が、この本を契機にして、自分を取り巻く社会の歴史と現状を読み直す。そのような読み方をしていただけると、この本を作った編集屋としては、嬉しいかぎりでございます。

紀伊國屋書店新宿本店では、すでに昨日から3Fと5Fで多面積みにて販売していただいております。また、同店3Fでは、11月1日より「論客『赤木智弘』の登場」というブックフェアが開催されます。なぜ同店でこれほど積極的に、この本を取り扱っていただけているのか。その裏には、ある書店人の「知的アンテナの鋭さ」と「知的関心」とが隠されているのですが、このお話は後日。

いくつか書評も出そうです。トークセッションも計画しております。随時、お知らせしていこうと思います。

ぶっちゃけ、「自分を取り巻く社会の歴史と現状を読み直す」なんてエラそうに書きましたが、そんなことは何かきっかけがなければやりませんよね。『若者を見殺しにする国』は、きっとそのきっかけになる本であろうかと思います。

ぜひぜひご一読いただければ幸甚に存じます。

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2007年10月24日 (水)

さきほど印刷所から連絡が入りまして、製本作業が遅れ気味なため、『若者を見殺しにする国』の配本日が26日に延期となりました。

配本を楽しみにしていた読者の方々に、深くお詫び申しあげます。

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2007年10月24日 (水)

20071024031433
作家の高村薫さん。社会のさまざまな問題を、鋭い視点で見すえ、分析する。そのうえで書かれた硬派な小説に、私は魅せられ続けています。あまり小説を読まない私であっても、「高村さんは、次に何を書くのだろう」と本が出るたびに期待しているんですよね。

じつは、前の出版社にいるとき、畏れ多くも私は高村さんに時評の執筆をお願いしたことがあります。何の面識もない零細出版社が著名な作家さんに、いきなりそんなことをお願いしても、うまくいくわけがありません。たいへんていねいな、お断りの手紙をいただいたのを覚えています。

その高村さんが、「AERA」(朝日新聞社)で「平成雑記帳」という連載をやっています。勝手ながら、高村さんの筆を小説だけで使うのはもったいない、と思っていました。ですから、この時事評論の連載は、毎回とても楽しみにしています。

といっても、「AERA」本紙自体への興味を、私はすでに失っています。なんだか「社会派の女性週刊誌」みたいなお手軽特集が多く、「調査報道はどこにいったんだよ~」とかなわぬ思いを抱いたり。まともに読むのは、高村さんの連載と「現代の肖像」のみ。だから、マンガ喫茶などで読むことが多く、めったに買いません。

さて、本題はここから。「AERA」2007年10月27日号の「平成雑記帳」のタイトルは、「売り手市場で学生が踊る。いつか、同じ光景を見た。私が経営者なら、こう雇う」。来年の新卒者に対する求人数がバブル期を超えた。その現象に対して高村さんが、「来年大学を卒業する学生たちが、少し前の就職氷河期の学生たちに比べてとくに優秀だというわけでもないだろうに、なぜこんな事態になるのだと自問し」つつ、いらだちを表明しています。

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2007年10月22日 (月)

若くはない、もしくは若者でない話し手が、「最近の若者は……」という紋切り型の若者批判を展開する。後藤和智さん(『ニートって言うな』[光文社新書]の執筆者のひとり)は、これを「俗流若者論」と名付けました。

産経新聞で配信された以下の記事における広島県知事の発言は、まさにソレです。みなさん、俗流若者論のサンプルとして、よーく覚えておきましょう(笑)。

「盛り場うろつくのどうか」 米兵集団暴行で広島県知事
10月21日20時16分配信 産経新聞

 山口県岩国市の米海兵隊岩国基地所属の海兵隊員4人が広島市内で10代後半の日本人女性に集団で乱暴したとされる事件を受けて、広島県の藤田雄山知事が「盛り場でうろうろしている未成年もどうかと思う」などと発言していたことが21日、分かった。
 県によると、藤田知事は20日に広島市内で開かれた「日本女性会議2007ひろしま」でのあいさつで、「朝の3時ごろまで盛り場でうろうろしている未成年もどうかと思うが、米兵による暴行事件が起きた。誠に遺憾で強く抗議したい」と述べた。
 藤田知事は「本意は犯罪に遭わないためのリスク管理について、一般論として言及しようとした。事件が事実であれば、その原因は当然加害者側にある」と説明している。


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2007年10月10日 (水)

朝方まで仕事をしていました。
眠い目でテレビを見ていると、日テレの朝のニュースで辛坊さんが年金問題について解説していました。
いつもはタカ派っぽい発言が多い辛坊さんですが、年金と所得格差に関する解説は、なかなか目をひくものがありました。

辛坊さんは、4つのデータを提示しました。
ひとつめは、「年収200万円以下、1千万人超える 民間給与統計」(2007年09月28日08時00分、asahi.com)に見られる所得格差のデータ。
ふたつめは、世代間の所得格差に関するもので、いかに若年世代の所得がが減っているのかを示すデータ。
みっつめは、国民年金を受けとっている人たちの平均受給額が年間240万円前後であり、共済年金に加入していた人たちの受給額が、さらに2割増しであるというデータ。
よっつめは、現在の国民年金の保険料についてのデータ。20歳以上60歳未満であれば、たとえ無職であっても保険料は一律で14,100円。この保険料は段階的に引き上げられ、2017年には16,900円前後になる予定。

これらのデータから導き出される問題は、年収200万円で月々14,100円の保険料を払っている1000万人以上もいるなかで、年金を受けとっている高齢者の平均受給額が年間240万円という状態は、いかがなものかというものです。正確には、保険料を引いたうえでの年収が180万円ちょっとの人たちが、働かなくても240万円をもらえる人たちを支えているということになります。

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2007年10月10日 (水)

Prints
「プリンツ21」というおもしろい雑誌があります。年4回発行の季刊で、毎号、ひとりのアーティストを特集するという、最近では貴重なつくりの雑誌です。

このプリンツを率いているのが、「構造汚職」という言葉を造った評論家の室伏哲郎さん。室伏さんといえば、私なんぞは「朝日ジャーナル」あたりで硬派な汚職批判の記事を執筆していた方だという記憶があります。

その室伏さんは美術評論家としても高名で、とりわけ版画に関する造詣が深い。というわけで、もとは版画を紹介・普及させる目的で出した雑誌が、現在の「プリンツ21」につながっているんですね。

ここ1年間の特集は、蜷川実花さんや金子國義さん、高田純次さんなど。さらにバックナンバーを調べてみると、恋月姫さんや安野モヨコさん、浅井忠信さん、会田誠さん、美輪明宏さん、そして私が敬愛する忌野清志郎さんも登場しています。

先月末に発売された最新号の特集は、映画評論家・映画監督の水野晴郎さんです。いまや映画「シベリア超特急」シリーズで有名な水野さんの横顔を、さまざまな角度から見つめています。日本有数の警察マニアだったりするんですよ。

ぜひぜひ読んでみてください!

prints (プリンツ) 21 2007年冬号 特集・水野晴郎 [雑誌]

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2007年10月10日 (水)

弊社刊『バックラッシュ!』のコーディネーターであり執筆者でもある荻上チキさんが、『ウェブ炎上』(ちくま新書)という本を出しました。おめでとうございまーす!

ウェブ炎上―ネット群集の暴走と可能性 (ちくま新書 683)
荻上 チキ
筑摩書房 (2007/10)
売り上げランキング: 3297

まだ手に入れておりませんが、チキさんが兼ねてから調査・研究・分析してきたものの集大成(もしくは中間報告?)であることはまちがいなく、ウェブに関心のある方は必見の本であることが予想されます。

キャンペーン用のページも準備されておりますので、ぜひ訪ねてみてください。

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2007年10月 9日 (火)

昨日、ミャンマーで殺された長井さんの葬儀があったそうです。
私は長井さんと面識がありません。しかし、以前は海外の紛争に興味を持ち、それを日本に伝える仕事をし、戦乱の地に長期滞在した経験のあるものとして、ある程度の親近感があります。
つつしんでご冥福を祈らせていただきます。

さて、昨日の日テレ「ニュースZERO」が、長井さんが亡くなる前に撮影したビデオテープを放映していました。それを見ていると……。

ん~、なんともいえませんね。

放映されたビデオテープによると、長井さんには現地のガイドがついていたようです。
で、長井さんはジャーナリストですから、取材地で起きている騒ぎの前線に立ちたい。そして、デモをする僧侶や住民の姿と、それに対峙する警察や兵隊の姿を撮影したい。

それに対して、ガイドさんは「危ない」といって騒ぎの現場から離れようとします。
そんなガイドさんに対して、長井さんは、

自分はイラクやアフガンで取材した経験がある。
大丈夫、大丈夫。

などということをいっている。
これって、どうなんでしょう。

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2007年10月 4日 (木)

藤原新也さんが元気です。
ミャンマーで死んだジャーナリスト長井健司さんに関連し、以下のエントリーでマスコミに鉄槌(てっつい)をくだしています。

shinya talk
10月1日

死んだときだけ騒ぐな。生きている時に何をしているかをフォローしろ

長井さんが殺されたシーンを、テレビが何度も繰り返して放送していたことについては、武田徹さんが疑問をていしています(武田徹 オンライン日記 9/28)。私自身は、テレビであのシーンを見かけるにつれて、あることを思い出してしまいました。それは、タイやカンボジアなどのタブロイド新聞が、1面のトップでひんぱんに掲載する、事件や事故などで死んだ人の写真です。

武田さんは、長井さんが映し出された映像について、「この露出量の多さは、ジャーナリストが射殺されるに至った事態の重要性ゆえのものなのか、狙撃の瞬間が記録された映像の刺激性(希少価値)の高さゆえなのかは考えた方がいい」といっています。私は、マスコミにおける後者の「性癖」が剥き出しになったように思えて仕方がありません。

「性癖」だから直しようがないとわかっていても、やっぱり腹は立ちます。大手マスコミの多くは、自社の社員をいかせたくないリスキーな戦地の取材のときだけ、まるで映像便利屋のように長井さん(もしくは、長井さんと立場が似たようなフリージャーナリスト)らを安いお金で使う。で、そういう人が戦地などで死ぬと、「邦人ジャーナリスト、死亡!」などとわざわざ騒ぎ立て、視聴者の欲望を満たしつつ視聴率を稼ぐ。

でも、ネタ元になる人が死んでいるのですから、その人が話題になって視聴率を稼いだ(稼ごうとした)ことに対するその人への報酬は、なし。いくら生きているときの功績を讃えられたって、そんなことは死んだ人自身には意味がありません。藤原さんがいうとおり、死んだ人をネタにして視聴率を稼いだ(稼ごうとした)マスコミは、せいぜい死んだ人の遺族にたっぷりと謝礼を支払うべきですね。

人は誰もが、人が殺される場面や死体の姿などを「見たい」と、潜在的には思っているのでしょう。だから、そういう場面や姿をマスコミがネタにするのは、致し方ないとも思います。でも、そうした人の欲求を利用して、視聴率を稼ぐのにも限度があるでしょう。いまだにワイドショーで、長井さんが殺されるシーンが流れているのを見るにつけ、「みっともないことをやり続けるな!」と思ってしまいます。

そして、私も藤原さんと同様に、ジャーナリストの海外での死亡については、せいぜい「訃報」でよいと思います。

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2007年10月 4日 (木)

20071004035740
「週刊朝日」10月12日号の「『一冊の本』が人生を変えることもある――小出版社の心意気」という記事で、弊社が(ちいさく)紹介されました。記事の執筆は、ひとり出版社である左右社の小柳学さんです。ありがとうございました!

そういえば、私がもっとも信頼を寄せる雑誌編集者の久田将義さんが、「実話GON ナックルズ」から「選択」に移籍した後、いまは「週刊朝日」にいらっしゃるとのこと。これで「週朝」の部数も、いまより伸びることでしょう。

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2007年10月 2日 (火)

Shiso
弊社の本が「諸君!」(文藝春秋)で紹介されるのは、はじめてのことです。
評者は、評論家で、北朝鮮帰国者の生命と人権を守る会の代表でもある三浦小太郎さん。
ふだんは、「諸君!」や「正論」(産経新聞社)で、北朝鮮問題に関するかなり強硬な意見を書かれている方です。

書評のタイトルは、「全体主義に陥らぬために」。内容は、「思想家の解説書でこれほど『役に立つ』本は珍しい」という書き出しからはじまり、全体にわたって「べた誉め」です。
それはそれで嬉しいのですが、特筆すべきは以下の記述です。

 著者は様々な思想家を論じつつ、その中で本来不可能なはずの「生き生きとした」世界への回帰を唱える左右両派の日本における言説がいかに愚かで危険なものであるかを指摘していく。しかし、私自身を含めて、「人間かくあるべし」「このような行動を取らない人間は人非人」と説く論者で巷は溢れている。私自身北朝鮮問題ではそのような言説を書き続けて来たし、今後もそう説き続けることをやめることはできないだろう。  だが、著者のような存在が常に触れていることが、私がファシズムであれスターリニズムであれ全体主義に陥らない歯止めにはなると思う。思想家のすべき仕事は人を安易な行動に駆り立てることではなく、世界と人間の危険性と愚かさに気づかせることだということを、これほど見事に教えてくれる本は数少ない。(「諸君!」2007年11月号、251ページ)

「諸君!」の誌面上で、弊社の本がこのように評されることについては、率直にいって歓迎すべきことだと思っています。仲正さんと私が、『デリダの遺言』と『思想の死相』で世に問いたかったのは、けっして左派の「生き生き言説」に対する批判だけでなく、同じことは右派にもいえるのではないか、ということだったからです。


以下、別件です。
斎藤さんと茂木さんの対談については、なかなか更新できず、斎藤さんにも読者のみなさんにもご迷惑をかけております。力不足で申し訳ありません。
このままずるずる放置するのはよくないと思っております。できるだけはやく、今後の方針についてご報告すべく、努力させていただきます。

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