2007年12月 5日 (水)
「気持ちいい」と「エイズ」の関係

12月1日は、世界エイズデーでした。
日本では、有名アーティストが参加したエイズ啓発ライブ「RED RIBBON LIVE 2007」がおこなわれたと、ニュースで報じてました。
ちなみに、レッドリボンとは、エイズ患者に対する理解と支援の象徴を表す赤いリボンのシンボルマークを指します。
私が滞在した時期のカンボジア(1990年から2002年)は、ちょうどHIVが国内に入り込みはじめたころから、エイズ発症者が倍々で激増していたという時期でした。都市部では病院に入院し、息を引き取る人もいましたが、地方では山奥の霊媒師らの元で、集団生活しながら死を迎える人もたくさんいました。
エイズ関連の取材を引き受けることも多かったので、国立性感染症センターなどにしばしば出入りしていました。そこでわかったことは、エイズのみならず、性感染症全般に関する一般の人びとへの啓発が、ほとんどなされていないという事実でした。隣国タイでは、大規模かつ長期でコンドームの使用を呼びかけるキャンペーンをおこなった結果、HIV感染者や性感染症の感染者はだいぶ減ったようです。
では、我が国・日本のエイズおよび性感染症の啓発は、しっかりなされているのでしょうか。
ここで基本的なことを確認しておきます。HIV(ヒト免疫不全ウイルス)が感染し、発症するとエイズ(後天性免疫不全症候群)になります。その感染経路は、血液と性交渉、そして母子感染の三つです。つまり、普通に生活しているぶんには、エイズ患者と接触してもHIVが感染することなどありません。
日常的にもっとも警戒すべき感染経路は、いうまでもなく性交渉です。しかし、日本でどれだけエイズに関する啓発、とりわけ性交渉による感染についての啓発をしているのかといえば、不十分であるといわざるをえないでしょう。ウィキペディアの解説は、「先進7カ国のうち、日本だけがHIV感染者及びAIDS患者が毎年増加傾向を示して」いるとしたうえで、以下のように続けます。
HIV感染の拡大の背景としては性行動の活発化及び若年化があり、それと連動するように人工妊娠中絶や性行為感染症(STD)が増加している。日本の若年者の性行動の傾向は、初交年齢の早まり、相手の多数化、性交に至るまでの期間の短縮化、オーラルセックスの日常化、売買春の増加といった状況が、性行動調査によって明らかになっている。またこれらの調査からコンドームの使用率は、特定の相手ではなく不特定の相手との性交渉をする場合に低く、特定の相手とであっても、そのパートナーの数が多いほど使用率が低い事が判明した。(「後天性免疫不全症候群」の項 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%BE%8C%E5%A4%A9%E6%80%A7%E5%85%8D%E7%96%AB%E4%B8%8D%E5%85%A8%E7%97%87%E5%80%99%E7%BE%A4)
おいおい、先進国・日本はどうしたんだよ。
若年者だからこそ、性交渉でコンドームを使用しなきゃならんでしょう。彼女が妊娠しちゃうかもしれないんだから、結婚前の男子は性行為の前提として、コンドームをつけなきゃねえ。そして女子は、コンドームをつけない男子にはやらせないのは当然。お互いに性病をうつしたり、うつされたりするかもしれないし。こんなの当たり前じゃありませんか。「気持ちよさ」の代償が性感染症の「感染」(エイズも含めて)では、リスクが高すぎますよ
ところが、これが当たり前じゃないみたいなんですよね。私が知る範囲の20代の男女に話を聞くと、男子は「生が気持ちいいじゃん」とかいうし、女子は「コンドームをつけてというと、嫌われる」なんていったり。そんなことをいっている場合じゃないでしょう。生でやっちゃって、クラミジアだのケジラミだのに感染したということは、まったく同じ経路でHIVに感染する可能性がある、ということなんですから。
以下、財団法人エイズ予防財団による、我が国のHIV感染者・エイズ患者に関するレポートの抜粋です。
わが国では、毎年HIV感染者・エイズ患者の報告数が増加し、2004年の1年間で新たに感染が確認されたHIV感染者数は780人、新規エイズ発症者は385人と初めて1,000件を超えました。 2005年の4月にはHIV感染者6,734人、エイズ患者3,336人を数え、その累積報告数は1万人を超え、年間の報告数には歯止めがかからない状況にあります。さらに、わが国のエイズ患者の約30%が、エイズを発症して初めてHIV感染に気づくという事実から、HIV抗体検査が実施されず、感染者自身HIVの感染に気づいていない無症候期にある患者の多くが、このHIV感染者数6,734人には算定されていない可能性が高いと指摘され、その数は、報告数の4倍に達すると推定するものもあります。
カンボジアのように、けっこう身近にエイズ発症者がいたりすると、当のカンボジア人たちはどうかわかりませんが、外国人の私は性感染症のおそろしさをつくづく感じたりしました。もちろん、だからといってエイズ感染者を避けたり差別する気持ちが芽生えるわけでは、けっしてありません。感染経路のことを知っていれば、そんな差別などする余地はありませんから。
いずれにしても、エイズに感染した場合の行く末が見えないがゆえに、エイズに感染したときのイメージがわきにくいというのは、確実にあるような気がします(これはおそらく、その他の性感染症も一緒でしょう)。かといって、感染経路に関する啓発をする前に、エイズを発症した人の映像や写真などを見せても、変な差別感情を生んでしまうだけになるかもしれません。啓発運動における、このへんのさじ加減はむずかしいと思います。
やはり、いまのところ学校教育で徹底した性感染症に関する啓発をおこなうのが、妥当なのかなあと思ったりします。おとなについては、恥ずかしがらずに、どしどしエイズ検査にいくしかないでしょう。
とりあえずは、生でやりまくっている(やっている)男子も女子も、エイズ検査にいったほうがいいと思います。とくに、生でやりまくっている人のなかで、エイズ以外の性感染症にかかったことのある人は、いますぐいったほうがいい。何度も書きますが、エイズとその他の性感染症とは、感染経路が同じなんです。そして、HIVに感染してしまった人ができることは、自分以外の人にHIVを感染させない、ということです。そのためには、まず自分が感染しているかどうかを知る必要があります。
今週の授業の冒頭で、この話をしようと思っています。私の講義をうけている学生諸君で、身に覚えのある人は、ぜひ検査にいってみてくださいね。マジで。
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