双風亭日乗

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2008年1月10日 (木)

世界10位の製紙会社の「品格」

「国家の品格」やら「女性の品格」などという本がバカ売れするなど、「品格」という言葉がもてはやされています。品格とは、その人や物に私たちが感じる気高さ、上品さ、そして品位のことをいうんですね。その「品格」を極端なマクロ(国家)に求めたり、極端なミクロ(個人)にもとめる必要を、私はまったく感じません。

とはいえ、会社というものに関しては、ある意味では「品位」が勝負なんだと思うことから、「品格」を重んじることはたいせつなことだと思います。そんなことをいうまでもなく、消費者は「品格」のない会社の商品を買わないでしょう。また、「品格」のない会社と取引をする会社など、あまりないでしょう。

さて、一昨日のTBS・NEWS23を見てびっくり。「再生紙はがき」と明記されて販売された年賀状は、じつは再生紙がほとんど使われていなかったということでした。はがきをつくった製紙会社は、日本製紙。それを販売したのは日本郵政。日本製紙のスタッフによる内部告発を契機におこなった調査報道による、久々に見る快心のスクープでした。

一昨日の段階では、TBSの取材に対して、言い逃れにもなっていないようないい加減な回答を、日本製紙はしていました。ところが、昨日になると一転して、品質を優先するために、古紙の配合率が発注時に決めた基準より下回っていたことを認め、「発注元である日本郵政ならびに関係者、消費者に多大なご迷惑を掛けたことを深くおわびする」という謝罪コメントを出しました。

おいおい、世界10位、日本2位の製紙会社さん、そんなんでいいんですか。昨年以前に製造した年賀状についても、古紙の配合率が基準より下回っていた可能性があり、現在調査中なのだとか。まぁ、内部調査では、発覚することにも限界があろうかと思いますが。

TBSは、内部告発の内容を確認するため、年賀状の原料に関して、かなり厳密な調査をおこなっていました(NEWS23の番組内で、調査の模様を紹介してました)。逆にいうと、厳密な調査をおこなわなければ、内部告発がないかぎり、こうしたことは世に知られなかったということにもなります。

今回の日本製紙の振る舞いから私たちが学ぶところがあるとすれば、第一に会社の「品格」を保つために「環境」をアピールする会社に、本当に「品格」があるのかどうかがマユツバになったという点。第二は、厳密な調査をしなくてはわからないような製品の品質表示が、どこまで信用していいのかわからなくなったという点。

これがわかったら「偽装」や「虚偽」になるが、それを暴くのにはカネもかかるし手間もかかる。消費者や取引先はそこまでチェックしないだろうから、適当にごまかして納品してしまえ……。今回の年賀状の話を単純化すると、こうなりましょう。そして、そういったことは、けっこうやられているんじゃないんですかね、たぶん。だって、私たち消費者には確かめようのないことなんて、いくらでもあるじゃないですか。

そういう意味で、やはり会社には「品格」が必要なんでしょう。製品の詳細がわからなかったり、わかりにくかったりする商品について、私たちはその会社の「品格」をバロメーターで買うしかありませんからね。日本郵政も多分にもれていないわけで、日本製紙がつくった「ニセ再生紙はがき」を4億枚も仕入れ、消費者に販売していたわけです。その売り上げは、単純計算でも200億円。

日本製紙の「品格」を信じていた日本郵政は、さぞショックだったことでしょう。しかしながら、最大の被害者は、日本郵政の「品格」を信じ、年賀状が「再生はがき」だと信じて購入した消費書なのでしょう。

それにしても、NEWS23。キャスター陣、どうにかしてもらいたいです。看板の筑紫哲弥さんは、社会問題への細かい気配りはいいのですが、「どこへいくにもTBSが手配するタクシーで」みたいな噂を聞くし。代打の後藤謙次さんは、ロボットが話しているみたいな感じ(腹話術の人形のような、といったほうが適切か)だし。膳場貴子さんは、愛想笑いの影に冷酷さを感じるし。三澤肇さんは、投手の工藤公康さんに似ているし(笑)。

ところで、このTBSのスクープは、あまり他のマスコミで報道されていません。「TBSによると……」って書くのが嫌なんでしょうね。他社のスクープを、各マスコミがどう後追いするのかという点については、たいへん興味がありますが、ここでは触れません。

以下は、TBSの動画ニュースの起こし原稿です。ページのリンクを貼っても、記事はすぐに削除されてしまいますので、参考までに全文を貼り付けておきます。

日本郵政、日本製紙に賠償請求を検討

再生紙年賀はがきに古い紙=古紙がわずか1%しか入っていなかった問題です。古紙の配合率を40%と定めて販売している日本郵政が、1%から5%しか古紙を配合していなかったメーカーの日本製紙に対して、損害賠償請求を検討していることが明らかになりました。

9日午後になって初めて出された日本製紙の謝罪文書。

「古紙の配合率が発注時に取り決めた基準を大きく下回っていたことに対し、発注元である日本郵政ならびに関係者、消費者の皆さまに多大なご迷惑をおかけしましたことを深くお詫び申し上げます」(日本製紙のHP)

およそ40億枚発行された年賀はがきをめぐるこの問題は、JNNの取材で明らかになりました。そのきっかけは、1通のメールでした。

「公称40%の古紙配合となっていますが、当社では1%しか配合していません」(日本製紙社員のメール)

差出人は、再生紙年賀はがきを製造する日本製紙の社員。環境のため、日本郵政が40%と定める古紙を1%しか使っていないというのです。

去年、全国各地のはがきを購入して、専門家に協力を依頼し、いくつかの実験を行いました。その結果、地域によるばらつきはあるものの、古紙は使われていたとしても1%から最大で5%ほどしかない、という結論に至りました。

日本製紙は8日、実際の古紙配合率は1%から5%だったと認めました。理由については、古紙の配合によって品質に問題が出ることがあり、ユーザーの要望に応えて品質を優先したと説明しています。

「多くの利用者は、再生紙であることで安心して年賀状を買って出している。その気持ちを裏切る、非常に大きな社会的責任を問われるべき案件だなと思います。ある意味、環境偽装と呼んでもいいかもしれません」(国広正弁護士)

販売元の日本郵政は、9日午前から実態調査に乗り出しました。「自分たちはある意味で被害者」と話し、古紙40%を求めた仕様を満たしていなければ、損害賠償請求を検討することを明らかにしました。

「損害が何なのかというと、考えられるのは、日本郵政の環境に対する取り組みの姿勢が結果的に間違い、正しくなかったと事実が明らかになったわけですから、日本郵政の信用が棄損された。その棄損された信用部分が、損害として製紙会社に賠償請求しうる」(国広正弁護士)

一方、製紙会社の監督官庁である経済産業省も、聞き取りなどの調査を開始。事実確認に問題があれば指導に踏み切るなど対応したいと話しています。

(TBS NEWS i 、2008年1月9日23時)

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» 古紙40%はがき、実は1%だけ!? トラックバック たなぼた
去年は「偽」だらけの1年だったけど、今年になってもまだ偽装発覚は続いているんだね 続きを読む

受信: 2008/01/10 17:11:42

» [床屋政談・ニュース速報]古紙再生偽装なんて、そんなに大した問題かね? トラックバック 躁うつ病高齢ニートの映画・TV・床屋政談日誌
双風舎さん経由で今ごろ知ったニュース。 2008年1月10日 (木)世界10位の製紙会社の「品格」 双風亭日乗 http://sofusha.moe-nifty.com/blog/2008/01/10_6d54.html 日本製紙は「古紙の配合によって品質に問題が出ることがあり、ユーザーの要望に応えて品質を優先した」と言... 続きを読む

受信: 2008/01/14 6:47:57

コメント

日本製紙㈱の古紙配合率の偽造。やっと出たかと言う感想。
内部告発した社員はすばらしい。私は言えないまま退社した。
古紙と言えば、旧大昭和系の工場が生産率が高いと思いますが、
多分今頃、関係社員又は関係会社は遅くまでグリーン購入法の
資料の見直し、訂正(偽造?)をしているんじゃないでしょうか。書類さえ整っていれば、現実の中身は全く関係無いという
会社の体質。たたけば埃の出る会社ではないでしょうか?
古紙は、中国需要が多く需給バランスが崩れ価格も高騰していると思います。従って、品質面と使用量分の手当てもしっかりと
されているのでしょうか?

投稿: 元社員から | 2008/01/16 22:34:21

まぁうそをついていたメーカーは悪いけれども
郵政のHPには「再生はがき」とも古紙配合率も載せてない。
(はがきには小さく「再生」ってありますけどね)
これでイメージが傷ついたって言っても、あまり説得力ないですね。

だいたい、古紙をいっぱい入れろ、白くしろってのは無理。
無理なのにグリーン購入法という法律=伝家の宝刀でもって
メーカーに生産を無理強いしたお役人にも問題あるでしょう。
古紙配合が高い=環境にやさしい、と勘違いして
それを法律で定めることがさも環境を考えている役所、というふりをしている。
古紙をいっぱい使えといっておきながら、「こんなんなります」というと
「黒くてだめ」「きたなくてだめ」なんて、そりゃわがままでしょう>郵政さん

ちなみに、私ははがきが40%再生紙だって知りませんでした。
インクジェットはがきも、そうなのかな?

投稿: Neco | 2008/01/17 7:20:59