双風亭日乗

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2008年1月19日 (土)

NHK職員のインサイダー取引

この件に関しては、以下の内田樹さんの考察が秀逸です。

内田樹の研究室「モラルハザードの構造」

とくに、印象に残る発言は、以下のふたつ。ひとつめは、「この金額の『少なさ』が私にはこの不祥事の『日常性』をむしろ雄弁に物語っているように思われた」。NHKのみならず、マスコミ関係者で、インサイダー情報に触れる機会のある(あった)人たちのなかには、自分がヤバイことをしていたことに気づき、胸がどきどきして破裂しそうな人がたくさんいるのでは。しかし、内部調査なんかやったって、「はい、インサイダー取引をやったことがあります」なんて自爆する人など、いるわけがないでしょう。

ふたつめは、「世の中が『自分のような人間』ばかりであったらたいへん住みにくくなるというタイプの人間は自分自身に呪いをかけているのである」という発言。これは、私が書いた「自分が書いた言葉は、自分にはね返る」というエントリーと、密接に関連しています。私はテキストを事例にしましたが、それを行動や態度、振る舞いの面で考えると、内田さんの発言とまったく重なります。

どこかで誰かが、内田さんのこのエントリーはロールズの正義論の啓蒙であり、それを専門用語を使わずに書いていることのすごさを指摘していました。そのとおりだと思います。内田さんの議論は、ときにクビを傾げることもあるものの、そのテキストには、みずからが習得した学問を世の中に還元しようという意識が感じられます。

それって、けっこうむずかしいことなんですよね。学者や研究者は、自分らだけ(学者だけ、学会だけ、研究者だけ、専門家だけ)がつうじるような専門用語を使っていれば、世の中一般からはツッコミの入らない安全地帯にいられます。たしかに、専門家なのですから、わかりやすけりゃいいってもんでもない。かといって、それを錦の御旗にして、自分の議論がわからない人に対して、「あなたが勉強不足だからわからないんだ」というように開き直るのは最低です。

けっきょく、学者や研究者と呼ばれる方は数多くいらっしゃいますが、第一に専門的な学問を専門用語で語ること、第二にその学問を社会にうまく還元する作業、このふたつを両立できない人が大多数なんだと思います。もちろん、両立できない人がダメだというのではありません。両立できる人、また両立せさようと考える人が稀有だということです。

一方で、コンテンツ不足の新書業界が、大学院生の修士論文を加筆修正してたうえで、お手軽に「わかりやすい言葉」の新書として出してしまうのにも、疑問があったりもします。読みごたえのあるものも、ときにありますが。あっ、脱線しまくりですみません(汗)。

以下に、表題のニュースについてご存じない方のために、朝日と日経の記事を貼り付けておきます。よろしければ参考にしてください。

NHK記者ら特ダネ悪用 3人が株売買 監視委が調査

 職員による株の不適正取引問題で、NHKは17日、報道局記者ら3人が証券取引法(現・金融商品取引法)違反(インサイダー取引)の疑いで、証券取引等監視委員会の調査を受けていることを明らかにした。3人は、NHKが特ダネとして報じた企業の資本業務提携の情報を、原稿システム端末などを通して放送前に知り、提携する企業の株を買ったとされる。3人は売り抜けて利益を得ており、NHKは内部で調査委員会を設け、処分を検討しているという。

 NHKによると、3人は報道局テレビニュース部制作記者(33)=96年入局=と、岐阜放送局放送部記者(30)=03年入局=、水戸放送局放送部ディレクター(40)=92年入局。うち2人は、端末などで原稿を見てから株を買ったことを認めているが、1人は「そんな原稿は見ていない。値動きを見て、何かあると思って購入した」と否認しているという。

 3人は07年3月8日、牛丼チェーン「すき家」などを展開するゼンショー(東京都港区)が、回転ずしチェーン「かっぱ寿司」などを展開するカッパ・クリエイト(さいたま市大宮区、いずれも東証1部上場)と資本業務提携を結んでグループ化するとのニュースが放送される直前に、カッパ社の株をそれぞれネット取引で約1千~3千株購入。翌日に売り抜け、10万~40万円程度の利益を得たという。

 カッパ社とゼンショーとの資本業務提携は、NHKが3月8日午後3時のニュースで放送し、15分後に発表された。この日の終値で1720円だったカッパ社の株価は、発表後の翌日は一時1890円の高値をつけた。

 NHKによると、3人は取材などに関与しておらず、業務上のつながりもなく、連絡は取り合っていないという。16日から監視委の任意の調査を受け、業務を離れて自宅待機中という。

 NHKでは、「取材で知り得たことを個人のために利用してはならない」とのガイドラインはあるが、株取引を規制する明文規定はないという。報道局の経済部記者については、家族も含めて株取引をやめるよう部内の会議などで口頭で注意しているが、3人は対象ではなかったという。

 会見で橋本元一会長は「報道機関として根幹に触れる問題。大変申し訳ない」と謝罪した。

 監視委は、悪質性や利益の額などに応じて、金融庁への課徴金納付命令勧告や、検察への刑事告発などを検討するとみられる。

(2008年01月18日02時10分、asahi.com)

放送前のニュース悪用・NHKインサイダー疑惑、5000人閲覧可能

 17日浮上したNHK職員のインサイダー疑惑は、報道機関の生命線であるニュースの情報を放送前に閲覧、不正な株取引をしていたとされる。記者会見した橋本元一NHK会長は「報道に携わる者として許されない行為」とショックを隠せない。特ダネを含め放送前のニュース原稿を閲覧できる職員は約5000人に上るといい、情報管理のあり方が問われそうだ。

 NHKによると、幹部が職員のインサイダー疑惑を把握したのは、証券取引等監視委員会が調査に入った16日という。NHKは同日、理事や弁護士らによる調査委員会を設置。事実関係の解明を急ぎ、再発防止策を取りまとめる方針。

(2008年1月19日07時01分、日経ネット)

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受信: 2008/01/20 20:58:55

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