双風亭日乗

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2008年2月26日 (火)

ニュースな話(イージス艦)

たまには、ニュース寸評など。

海上自衛隊のイージス艦「あたご」と漁船「清徳丸」の衝突事故から一週間がたちました。事故直後から、「地元の漁協=クリヤー」「防衛省&海上自衛隊=あいまい」という情報提供の構図がつづき、なかなか真相があきらかになりません。

夜間大学にいっていた4年間、私も横浜市の現業職で船に乗っていました。港湾工事事務所に所属し、横浜港の浚渫(港の岸壁に溜まった泥をクレーンですくい、その泥を艀(はしけ)に積んで埋め立て地に捨てにいく仕事)をやってました。おもにクレーンの運転を担当しましたが、ときには艀に乗って、現場と埋め立て地を往復しました。

横浜港は、けっこう船の出入りが多く、「正面から船が来たら右に舵を切る」という超基本的なルールを実行する機会も多かったんです。船は、急には止まれないし、急には曲がれない。だから、前方に船が航行しているかどうかを、船員は細心の注意をはらって確認します。そして、お互いに進路を譲り合うことによって、事故を回避する。

どんな船であっても、こうした「注意」は怠ってはなりません。このルールは、船の大小とは関係がなく、どの船も守らなければならないものです。でも、実際に港を船で航行していると、大きな船はひたすら目的地に向かって直進し、小さな船がそれをよけることが多い。譲り合うことなど、さほどなかったような気がします。

いずれにせよ、こうした船の制動に関する特徴や航行のルールについては、正直、船の操舵に関わったことがないと、なかなか理解も共感もできるものではないとは思います。だから、どちらかというと世論の怒りの矛先は、イージス艦が超基本的なルールも守らずに航行していた可能性があるということよりも、事故で漁船のおふたりが行方不明になっていることのほうに向いていると思います。

もちろん、行方不明者を出した事故の責任は重いものです。ご家族の心労も、半端なものではないでしょう。ですが、その点ばかりに注目した場合、石破防衛相が行方不明者の家族に頭を下げたら「まいっか」ということになりかねません。この事故のポイントは、船の基本的な運行ルールを、イージス艦が守れていなかった可能性があるという点であり、この点を徹底検証しなければ、ふたたび不幸な犠牲者が生まれるかもしれないということだと思います。

この事故に関しては、船を所持し、ご自身で操舵するという作家の藤原新也さんが、そこらで読める大新聞のニュース原稿などとは比較にならないような、適切な指摘をご自身のブログでしています。この事故の本質を鋭くついており、これを読めば今回の事故の何が問題なのかが、明確に理解できることでしょう。

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