2008年10月20日 (月)
集中連載! 「犯罪と社会の明日を考える」 第1回
藤井誠二著『重罰化は悪いことなのか』の配本まで、あと5日となりました。せっかくの機会ですから、拙ブログの読者のみなさんとともに、「犯罪」や「罪と罰」などについて考えてみるのもよいかと思いました。不定期になってしまいますが、一応は同書の発売を記念した連載ということで、お付き合いいただければ幸いです。
毎回、「犯罪」や「罪と罰」に関するキーワードを取りあげますので、コメント欄を利用するなどして、よろしければ読者のみなさんのご意見やご感想を聞かせてください。同書の配本後は、本の内容に関する声もお寄せください。いただいたご意見やご感想については、その内容を著者に伝えるとともに、場合によっては著者からのコメントをいただけるように調整してみます。
では、はじめましょうか。第1回目のキーワードは、「死刑」です。
第1回 「死刑」(その1)
死刑といった場合、みなさんはどのような刑罰だと想像しているのでしょうか。そして、どのように執行されていると思っているのでしょうか。一時期、イラクのフセインが絞首刑となった映像が、メディアで流されていました。日本の死刑も、あんな感じで執行されているのでしょうか?
以下、法律や犯罪については素人の私がもっている、死刑に関する素朴な疑問を書いてみようと思います。
『重罰化は悪いことなのか』(以下、『重罰化』)で藤井さんと郷田マモラさんが、死刑について対話しています。郷田さんは、『モリのアサガオ』(双葉社)という新人刑務官と死刑囚の物語を漫画で書いた方です。私は、『重罰化』をつくるのにあたり、『モリのアサガオ』の全巻を読みました。この漫画を読めば、刑務所で働く刑務官のお仕事や死刑囚の実態がよくわかります。もちろん、死刑執行の方法も。
いまの日本では、最高の刑罰として死刑が存在します。そして、死刑を存置するか廃止するかで、いろんな人々が論争をしています。しかし、すこし立ち止まってみてください。まず、いまの日本には、死刑という制度が「ある」ということに注目してみましょう。
制度のうえで死刑が存在する以上、死刑が確定した囚人の死刑を執行するのが法務大臣の役目です。刑事訴訟法では、死刑が確定したあと、法務大臣の命令で6カ月に執行することが定められています。にもかかわらず、歴代の法務大臣は刑の執行をなかなか命令しませんでした。だからこそ、鳩山邦夫元法務大臣が13人「も」死刑を執行したことに、注目が集まりました。
こういったことを知るにつけ、死刑制度があるのに執行しないのだとすれば、それは法務大臣の職務怠慢だという思いを強くいだくようになりました。ちなみに、このことは制度が機能しているかどうかという問題であり、死刑の有無とは別の問題です。考えてみてください。最高の刑罰である死刑が制度のうえで存在しても、執行されなければ最高の刑罰であることの意味がなくなってしまうのではありませんか。
もし死刑に「犯罪の抑止力」という機能も求めている場合、執行しなければその機能をはたさないことになります。そんな状況では、凶悪な犯罪を起こそうとしている人が、「死刑判決が出ても、どうせ執行されないだろう」と思ってしまっても仕方がないのでは。
いずれにしても、死刑という制度があるのに、それがなかなか執行されないというのは、おかしなことだと私は思いました。念を押しておきますが、ここでの議論は死刑の有無とは別の話で、あくまでも制度としての死刑を見つめています。
『重罰化』に関わるまで、死刑について、私は深く考えたことがありませんでした。「深く」といっても、このような素人談義なわけですが。いや、犯罪について深く考えたことがなかったかもしれません。そういう意味で、『重罰化』でおこなわれている対話は、どれもわかりやすい内容となっているので、「犯罪」や「罪と罰」について議論する際のたたき台になるような気がしています。
おそらく、死刑が制度としてあったとしても、執行しないほうがいいという意見の方もいらっしゃることでしょう。藤井さんが『重罰化』のまえがきに書いていますが、とにかく「犯罪」や「罪と罰」をめぐる話に「絶対」というものがないことから、さまざまな議論を積み重ね、試行錯誤をしていくしかないということだけは確実にいえそうです。
次回は、死刑を存置すべきか廃止すべきか、という問題を考えてみます。
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コメント
私は、現在死刑制度賛成の考えの持ち主ですが、それはさておき
確かに法務大臣の職務の一つと考えると、死刑執行しないのはおっしゃる通り職務怠慢だと思います。法務大臣を引き受けるということは、死刑執行も行うという前提で引き受けるのが当たり前だと思います。自分の任期中に死刑執行を行わずに、何を主張するでもなく任期をおえてしまうのは『逃げている責任を逃れている。』と言えると思います。
投稿: みむめも | 2008/10/20 20:30:26
僕は個人的には死刑制度反対です。が、現行制度として死刑がある以上、その判決や執行は適正に行われるべきだと思っています。
死刑制度存廃の議論はとかく誹謗中傷合戦になりがちですが、どちらの道をとるかということは、いかなる社会像を描くのか、ということと密接に関連することです。
死刑を存置するのであれば、国家の名の下、社会維持のために人間の命を奪うという科を国民が共有しなければならない(国民主権である以上、少なくとも概念上は我々自身が受刑者の命を奪うことになる)でしょう。
一方、死刑を廃止するのであれば、社会にとっての危険分子を抱え続ける覚悟を国民が共有しなければならない。
どちらの道を選ぶにせよ、我々自身が責任を持たなければならないことです。勧善懲悪的発想と近代法は違うところにあるわけですからね。
次回も楽しみにさせていただきます。
投稿: 寿 | 2008/10/20 23:06:43
死刑の場合を略してコペピしてみました。
以下の条文だけ見るとどれも死刑相当のような気がします。
ただ尊属殺は廃止すべきです。
死刑は有期刑・無期刑を超える罰則かどうか問題ですね。
私は死刑判決が犯罪抑止力より被害感情を考慮している場合が多いと思います。
ですから死刑判決が出た場合は速やかに執行すべきで遅延は被害者に対して不幸だと思います。
仮に被害者側に死刑制度が不服なら減刑にむけて裁判所に訴えることはできるんですから。
今までで一番ひどい法務大臣は「信仰により死刑の執行命令はできない」と言った人で、職務が遂行できないなら大臣職に就くべきでなかったと思っています。
刑法77条 国の統治機構を破壊・暴動の首謀者
刑法81条 外国と通じて日本国に武力攻撃
刑法82条 侵略国に軍事上の援助
刑法108条 人がいる建造物等を放火
刑法117条 爆発させ建造物等を破壊
刑法119条 人がいる建造物等を水で破壊
刑法126条 人がいる列車等を破壊死
刑法127条 往来危険による船車覆没致死
刑法146条 水道毒物混入致死
刑法199条 殺人
刑法200条 尊属殺人 (自分・配偶者の親等の殺人)
刑法240条 強盗致死
刑法241条 強盗強姦致死
爆発物取締
1条 爆発物を使用し治安を乱す、
決闘
3条 決闘による殺人
航空機の強取等の処罰
2条 航空機を乗っ取り死亡させた
航空の危険を生じさせる行為等の処罰に関する法律
2条 航空機墜落致死 航空機を墜落・転覆等させたり破壊したりして、その結果人を死亡させた
人質による強要行為等の処罰に関する法律
4条 航空機を乗っ取り人質殺害
組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律
3条 組織的殺人
投稿: 次回が楽しみです | 2008/10/21 8:20:52
尊属殺は確か削除されたはずです。
投稿: | 2008/10/21 9:16:14