双風亭日乗

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2008年11月20日 (木)

「エイズ新規感染、過去最多」なんだそうです

本日付の読売新聞によると、日本でのエイズ新規感染者の数が過去最多とのこと。

日本のエイズ感染者数に関する情報は、「人口と比較した感染者数が、海外とくらべて少なすぎる」とか「厚労省がほんとうの数字を隠している」という陰謀論が、しばしばささやかれたりします。たしかに、厚労省が感染者数を隠蔽しているのなら、それは大きな問題だとは思いますが、そんなことよりも大きな問題があるでしょう。

ちなみにエイズ(AIDS)というのは後天性免疫不全症候群のこと。ヒト免疫不全ウイルス(HIV)に感染した人は、潜伏期を経て、免疫不全により肺炎や皮膚炎、脳炎などを引き起こして死亡します。昔は不治の病といわてれましたが、いまは薬剤の進化により発症を抑えることができるようになったようです。

エイズに関する問題点は貧困や薬物、性交渉、そして薬害など多岐にわたることから、ここでは論点を若年者の性行為にしぼって議論を進めましょう。日本の場合、「大きな問題」はそこにあるような気がするからです。

アフリカや東南アジアなど、エイズがまんえんしている国では、エイズが原因で人がばたばた死んでいきます。目の前で人が死ぬのを見れば、病気の深刻さや人の死について、いやおうなく考えることになりましょう。そういう国々では、世界保健機構(WHO)などの国際機関、またNGOなどの主導により、予防や治療、そして啓発などが行われています。

さて、日本ではエイズ患者の存在や患者の死は、隠される傾向にあるようで、日常的に出会うことはほとんどありません。ですから、日本にいるとエイズという病について、目に見えるかたちで知るような機会がないことから、なかなかイメージがつかみにくいということがあると思います。

義務教育での性教育の実状は、調べてみないとわかりません。しかし、若い男女の話を話を聞いているかぎりでは、義務教育の段階で性交渉や性感染症について、どれだけ有効な情報が提供されているのか心許ないところです。あまりにも安直で安易な性意識がまかりとおっているような気がします。

あくまでも私が知る範囲でのことですが、たとえば若年男性には、避妊や性感染症に関する知識がとぼしい人が多い。「ナマでやるほうが気持ちいい」とか「女の子がナマでやらせてくれた」などと、平気でいう輩がたくさんいます。

他方、若年女性の話を聞くと、「男性に対して『コンドームをつけて』とはいいづらい」とか「好きだから、ナマでやらせてもいい」という声が聞こえてきます。後者については、本人の知識の欠如が問題だと思いますが、前者についてはあきらかに男性が配慮すべき問題です。

基本的には、女性のほうが避妊や性感染症に関する関心が高いようですが、いくら関心が高くても、性交渉の相手である男性が無知で身勝手な振る舞いをしている限り、意味がありません。相手の性の遍歴なんて、よくわからない場合が多いのですから、避妊せずに性交渉をしたいのであれば、お互いが十分に話し合い、合意したあとでも遅くはありません。

私はいくつかの大学で非常勤をやっています。おもにカンボジアの社会史(とくにポルポト時代)に関する講義を担当しています。もちろん話の流れで、現代カンボジアの話になりますし、エイズの話をしたりすることもあります。学生には、私がカンボジアで目の当たりにしたエイズの状況を説明しつつ、こういっています。

まず、男子学生。セックスするのはいいけれど、むやみやたらに「ナマでやらせて」などと相手に求めることはナンセンス。これまで複数の相手と「ナマ」でセックスしたのであれば、まず自分が性感染症にかかっている可能性がある。検査もしないで、次の相手と「ナマ」でセックスすると、自分の病気を相手にうつしてしまうかもしれない。

また、女性は男性から「避妊するのはいやだ」といわれたら、精神的には断りづらい。断りづらいことにつけこむのではなく、男性のほうから配慮してコンドームをつけるべき。

つづいて、女子学生。基本的には、いくら強引に迫られても、ナマでやらせるべきではない。とくに、相手に複数の女性との経験がある場合は要注意。男性への愛や恋は、「ナマ」でやらせてあげるかどうかで決まるわけではない。身勝手で無知な男性が多いのだから、しっかり自己防衛する。

自分が複数の相手との経験があり、「ナマ」でやったことがある場合は、一度は性感染症の検査にいったほうがいい。それは、男子も女子も共通していえること。

いずれにしても、このような性に関する超基礎的な問題を、大学生に話す必要があるということ自体、どうかと思います。できれば、多くの学生が、そんなことを話している私に対して「そんなのすでに知ってるよ。ちゃんと実践してるんだ、あほ」と思っていてくれたらいいのですが。上記で記したような意識は、中学生あたりで身につけていてよいものでしょう。

知識や意識のない人同士のセックスは、最悪はエイズの可能性もあるという意味で、「注意一秒怪我一生」なんですよ。すくなくとも私が関わった学生たちには、そのことを知ってもらいたいと思っています。念のためにいっておきますが、若年層のすべてにまともな性意識が欠けているといっているのではありません。きちんと理解している人もいることでしょう。しかし、あくまでも私の知る範囲では、そういう傾向が見受けられる、という話です。

「若者叩き」とかではありませんので。あしからず。

以下は、新聞記事のコピーです。

エイズ新規感染、過去最多

 厚生労働省エイズ動向委員会(委員長=岩本愛吉・東京大教授)は19日、3か月ごとに公表される、新規のエイズウイルス(HIV)感染者・患者の合計が413人と過去最多を記録したと発表した。

 患者・感染者の累計は1985年の統計開始以来、1万5000人を突破した。

 今回発表されたのは、6月30日〜9月28日までに報告された新規感染者・患者数。感染者数は294人(男性282人、女性12人)と過去最高。年齢別にみると30歳代が116人、20歳代が83人と多く、同性間の性的接触による感染が211人(72%)と最多だった。

 また、新たにエイズを発症して患者と認められた人は119人で、2004年同期に次ぐ過去2位を記録した。

 感染、患者数の累計は1万5037人。岩本委員長は「感染の広がりと検査件数の増加で、新規感染者が増えている。早期治療、感染拡大防止のためにも検査や、予防に関する普及啓発に努める必要がある」と話している。(2008年11月20日 読売新聞)

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