2010年5月27日 (木)
電子書籍について
「週刊SPA!」(2010年6月1日号)の特集は、「出版崩壊!? 現場マル秘レポート」でした。「崩壊」といえば、だいぶ前から崩壊しているような気がするので、なにをいまさらとは思います。それでも、電子書籍がらみの記事があるので、読んでみました。
特集の内容を超訳すると、こうなります。第一に、出版の売上は下がり続けているが、上がる要素はないこと。第二に、それでも現状の取次システムでは、とりあえず本を出せば一時的にお金が入るので、発行点数は増え続けていること。第三に、売上減で点数増加なので、現場で働く人の労働条件が劣悪になっていること、など。
そして、第四に、iPadやキンドルといった「電子ブックリーダー」の普及と「コンテンツ」(本のデータなど)の増加により、「本と本を取りまく世界は、確実に変容のときを迎えようとしている」という言葉で特集は結ばれています。
第一から第三の点については、拙ブログでもさんざん述べてきたので、繰り返しません。「本」というモノがどうこうという以前の問題として、取次を中心とする護送船団方式の流通が変わらないかぎり、いくらよい本を出しつづけても、出版に未来はないと思います。
ここでは第四の点、つまり電子書籍がらみの問題を考えてみましょう。結論からいえば、記事で山本一郎さんが指摘していることに同意します。すなわち、エロ系を中心に電子書籍は普及していくのは確実であるものの、「すぐ紙の本と入れ替わるかといえば疑問です。完全な世代交代まで15年はかかるでしょうね」ということです。
なんだか、機密費をもらっている(もらっていた)政治評論家や政治部記者らと同じように、電子ブックリーダー業界や電子書籍業界から便宜を供与されているんじゃないかと思うくらい、本の電子化を翼賛しているITジャーナリストみたいな人がいます。そういう人たちにくらべて、山本さんは冷静だなあ、とつくづく思います。
いろんなことがいわれていますが、現状はようやく電子ブックリーダーが普及しはじめる段階です。これまでなかったような新しいモノが出はじめるときには、世間が注目するのは必然で、かといってその新しいモノによって何かが変わるかどうかは、しばらく経過してみないとわからない。
アメリカの実績がどうこうというけれど、文化や言語、流通システムなどが異なる国の出版事情と日本のそれを比較検討して、日本の出版の未来を予想するなんて荒技を、どこまで信用できるのだろう、という素朴な疑問が私にはあります。
双風舎としては、モノとしての本とともに、今後はコンテンツの電子化を進めていこうと考えています。しかし、電子の売上がモノの売上を超えるのかどうかなど、やってみなければわかりません。なんでもかんでも電子化するのではなく、電子化にマッチしたジャンルというのもあるような気がします。
ここは、電子書籍の翼賛記事に踊らされることなく、いろいろと試行錯誤しつつ、本の出し方をじっくりと模索していくタイミングなのではないか、というのが私の考えです。けっして、本の電子化に抗うということではなく。過剰に踊らず、過小に評価せず、ですね(笑)
日乗 | コメント (1)
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コメント
はじめまして。突然のコメント失礼いたします。
私は独立したての同業の者ですが、
やはり電子書籍について少しずつ考えはじめています。
一介の編集者、編プロにとって、大きなチャンスでもあるからです。
しかしやはり、本コラムで仰っているような違和感を常に感じています。
特に最近は、ITを勉強しようとしない出版人か、
出版を知ろうとしないIT畑の人とばかりお仕事していますので(笑)
真っ当な、という言い方は失礼ですが、
バランスの良いご意見を目にすることができ、
久しぶりに何かホッとしたような感じがいたしました。
ありがとうございます。
投稿: nonaka | 2010/05/27 23:46:09