2010年10月29日 (金)
クマが殺されて、噴きあがる人々
まずは、共同通信が配信したこの記事を読んでください。
親子グマ射殺に抗議相次ぐ 困惑する福島県西会津町
全国でクマの出没が相次ぐ中、親子グマ2頭を射殺した福島県西会津町に「かわいそう」と抗議する電話やメールが相次いでいることが28日、町への取材で分かった。町はクマよけ装置設置など対策を進めているが、入り込むのを防ぎきれない。住民の安全確保と野生動物保護の間で山あいの町は困惑するばかりだ。
西会津町では18日夕、住宅の庭にある柿の木で親子グマ3頭が見つかった。人の出入りが少ない夜間という事情も考慮し、町は山へ逃がすことを最優先。柿を食べ、19日未明に木から下りた3頭を誘導して山林に追い返した。町には「良かった」と対応を評価する声が寄せられた。
23日朝には住宅近くの空き地で、18日とは別とみられる親子グマが柿の木にいるのを住民が発見。町は住民の安全を優先し、地元猟友会会員が2頭を射殺した。町には23日から抗議が相次いでいる。件数は明らかにしていない。(共同通信 2010/10/28 19:19)
人が何人かいた場合、誰の命がたいせつかどうかは、判断しかねるでしょう。しかし、人以外の生き物は、そうではありません。
記事で話題になっているクマの場合、「人に害を与えているかどうか」が、殺すかどうかを判断するもっとも重要な点でしょう。さらに、「個体数が少なく、保護しないと絶滅してしまう可能性があるのかないのか」を判断の材料に加えるのもありだと思います。
報道されているように、クマが街に下りて、人に危害をくわえている事件が多発しています。こうした場合、クマは「有害鳥獣」と見なされ、猟友会による「駆除事業」の対象となるわけです。
ちなみに有害鳥獣とは、農林水産物を食べてしまったり、いたずらしたり、人を襲ったりするなど、ようは人に対して害を為す動物のことです。代表的なものは、イノシシやニホンザル、シカ、クマ、キツネ、そしてカラスなど。これらの動物が害を為さなければなにもしませんが、害を為せば駆除されるのはいたしかたないことなのです。
残念ながら、人は、人以外の生き物の生死を、好き勝手にコントロールしてきましたし、これからもしていくでしょう。
テレビで見かけた親子クマの射殺がかわいそうだからといって、クマが出る地域に暮らしてもいないのに感情的になる。さらに、有害鳥獣の駆除をやめろという。これは、地元の人々の安全を無視した、単なる上から目線のエゴだと思います。
もう引き合いに出すのも気が引けますが、クマの射殺で騒いでいる人たちは、牛や豚の屠殺について、いったいどう考えているのでしょうか。クマはかわいそうで、牛や豚はかわいそうじゃない。だから、牛や豚が殺されても騒がないのでしょうか。
そんなのおかしいですよね。おかしいけれど、パッと見がかわいそうに見えると、過剰に反応してしまうのは、なぜなのでしょうか。
どんな生き物だって、おそらく殺された姿を見たら、かわいそうに思えます。しかし、そこで立ち止まり、「なぜこの生き物は殺されたのだろう」と考えてみれば、噴きあがるようなことはないのでは。思考を停止せず、考えつづければ、クマがなぜ殺されざるをえなかったのか、わかってくると思いますので。
「子猫殺し」も「捕鯨」も「イルカ漁」も、噴きあがっている人の多くは、「殺されてかわいそう」で思考停止しているような気がします。なによりも恐ろしいのは、「子猫殺し」騒動のときのように、「殺された生き物がかわいそうだから、その生き物を殺した人間を殺してしまえ」みたいな気運になってしまうことです。
日乗 | コメント (0)
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