双風亭日乗

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2011年8月10日 (水)

夕刊ガジェット通信の記事(8月8日付)について

夕刊ガジェット通信に書いた「『花王』を生け贄にして何がおもしろいのか」について、いろいろなご意見をいただいております。というか、その多くは「ネット見て電話したんですよね? フジテレビを支持しております」という花王の電話対応があったことを、調べもしないで記事を書くな、という批判的なものでした。

これだけネットで騒動になっているのですから、電話対応の一件については知っていました。しかし、あえてその件については触れませんでした。その理由は、以下となります。

■「ノリ」「勢い」「一体感」に違和感

まず、フジテレビが韓流ドラマをたくさん放映していることに対する意見については、いろいろあってもいいと思います。もちろん、批判的な意見があってもいい。でも、その批判の矛先が特定のスポンサー企業にまで及び、かつ「不買運動」にまで発展していることについては、疑問に思わざるをえませんでした。

商品を製造・販売する企業に対して「不買運動」を起こせば、起こした側にも重大な責任が生じます。仮に、「不買運動」によって商品が売れなくなり、企業活動にマイナスの影響が出た場合、その影響はそこで働く多くの人びとにもおよびます。そういう過酷な状況も想定し、引きうけ、覚悟したうえで、「不買運動」を起こすのであれば、私には何もいうことはできません。でも、ネット上での花王に対する「不買運動」には、そういう想定や覚悟があまり見うけられず、「ノリ」や「勢い」で花王にクレームをつけているものが多いように思えました。

さらに、過酷な状況が起きうるようなことを自覚していれば、花王の電話対応を「ネット情報」として鵜呑みにするのではなく、自らが花王に電話をかけて、その対応を自分の耳で確認したうえで、つけるべきクレームをつけるというのが筋なのではないでしょうか。しかし、ネット上で花王にクレームをつける文章や、アマゾンレビューに低得点をつけているようなレビューには、花王に電話をしていないし、花王の商品を使ってもいないのに、「ノリ」や「勢い」で、妙な「一体感」を楽しみつつ、花王を責めているようなものが多いように感じました。

花王にクレームをつけている人のうち、どれだけの人が実際に電話をかけたり、商品を使っているのか、私にはわかりません。それを知っているのはクレームをつけているご本人のみ。「電話をかけた、かけなかった」「商品を使った、使っていない」という水掛け論になってしまうので、これ以上は触れません。

■やはり「花王」は偶然選ばれたのでは

次に、テレビ局の番組編成が気にくわなかったり、番組自体が気にくわないからといって、「そのこと」について局のスポンサー企業にクレームをつけるのはどうか、という思いがあります。テレビ放送が地上波デジタルからBS、そしてCSも含めて多チャンネル化するなか、視聴者が気にくわない番組編成や気にくわない番組など、いくらでもあるかと思います。

にもかかわらず、「そのこと」が気に入らないからスポンサー企業を叩くといった話は、ほとんど聞いたことがありません。そういう意味で、今回のフジテレビおよび花王の事例については、高岡さんが火をつけたことによって偶然起きたことだ、と私は認識しています。

さらに、今回は電話対応が悪かった花王が叩かれることになったものの、もし他の企業の電話対応が悪ければ、その企業が花王と同じように集中して叩かれていたのではないか、と私は考えています。ようは、叩く企業はフジテレビのスポンサー企業ならどこでもよく、今回はたまたま電話対応が悪かった花王が選ばれたのではないか、と私は推測しているのです。花王を叩く正当性を主張する方には、なぜ他のスポンサー企業は花王と同様に叩かないのかも、一緒に説明していただきたいところです。

■記事の論点、そして論点の裏側

以上で記したことのほかに、「花王の電話対応」について記事で触れなかった理由で最大のものがあります。それは、これだけネットでフジテレビと花王に関する情報が出回っているのだから、花王の件について書かれた記事は「花王の電話対応」も前提になっている、ということです。記事を読んでご批判なさる方々が、口をそろえてそのことを指摘なさっていること自体が、その証拠となっています。

事情をくわしく知らない方には、不親切な記事であったかもしれません。しかし、花王にクレームをつけている方々には、「花王の電話対応」を前提にして、あえてあのような書き方をしていることは、ご理解いただけていることと察しています。

記事の論点は、ただひとつ。「ノリ」や「勢い」を元に、妙な「一体感」を楽しみながら、たまたま選んだ一企業を叩くのは、ちょっとやりすぎなのではないか、ということです。その論点の裏側には、自分がやっていることが、ある企業の活動にマイナスの影響をおよぼす可能性があることや、その企業で働く人たちが置かれる立場に影響がおこりうることまで想像してやっているのか、さらにそういう状況を引きうける覚悟があるのか、という問いかけを記事でおこなえれば、という思いがありました。

いずれにしても、いまとなっては「花王の電話対応」の一件については、記事のなかで触れておいてもよかった、と考えています。あの記事で、はじめて「フジテレビ・花王騒動」について知った読者には、不親切であったかもしれません。ご指摘いただいた方々に感謝するとともに、ご意見は今後の原稿執筆の参考にさせていただこうと思います。

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受信: 2011/08/12 14:57:27

コメント

つまり、花王叩きをしている人ひとりひとりに取材もせずに、『「ノリ」や「勢い」を元に、妙な「一体感」を楽しみながら、たまたま選んだ一企業を叩いている』と鵜呑みにするのはよくないって事ですね。よく分かります。

投稿: | 2011/08/10 20:51:26

花王の電話の件は本当に酷いと思いました。
あと、レビューも

嘘の情報を流して、嘘の人気(レビュー)を流す。

フジのやってきた(疑いのある)ことをそのまま自分達がやってしまってますからね。

要するに
タバコを吸いながら禁煙運動しているようなものですね

指摘する側が指摘する立場に立てていない。
あと、電凸もお客様センターの対応より、高慢で高飛車なクレーマーのほうが不愉快でした。

あと、こういう同情的なコメントをすると、すぐに「工作員」と決め付ける空気もちょっと引きます。


とにかく、過激な人は冷静さを欠いてますね。
少し頭を冷やして欲しいです。

投稿: 同意します | 2011/08/11 5:56:15

「"フジテレビの日"である8月8日に花王製品を返品しよう」や、Amazonの花王製品ページに酷評コメントが集中、ネットユーザーの"アンチ・フジ"モードは日に日にエスカレートしたそうですが、高岡蒼甫という一俳優のつぶやきから始まった今回の騒動で日本のマスコミの報道姿勢を正すきっかけとなるのだろうか。

投稿: 智太郎 | 2011/08/12 11:21:34

軽いノリで一企業を生贄にしたかどうか、検証しましたか?僕は全く違いますけどね。花王の窓口の対応のひどさは、既にYoutubeに上がっていますしね。

それも含めて、マスコミを擁護する側はなぜかくもたくさんの日本人が、今までの日本人の様式から考えると過激に見えるような手段で抗議に走っているかを絶対書きませんね。

これ、事態の本質をわかっていないから、ではないですよね。あえて論点をすり替えようとしてますよね。で、僕らがずっと抗議を続けている最大の理由は、こういうマスコミの恣意的報道姿勢の危険性と卑怯ぶりを見てとったからです。

あと、俺らがフジと花王に特化するのは、「弱者」が戦う方法として当然ですよね。マスコミ全体とかスポンサー全体に運動をしかけてどうなるもんでもないでしょ?それを批判されても、「んじゃベトナムはアメリカと戦うのにどうすればよかったの?」って話ですよ。

あなたも、俺らがいまだに「運動」をやめない真相を逃げずに報道してみてくださいな。そこからじゃないですか?

投稿: 長谷川友哉 | 2011/08/17 10:42:16