双風亭日乗

2008年10月23日 (木)

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「少年犯罪」(その1)

『重罰化は悪いことなのか』では、少年犯罪について、芹沢さんと藤井さんの対談、宮台さんと藤井さんの対談の双方で議論されています。

さて、現在にいたる重罰化の流れをごく簡単に整理すると、以下のようになるかと思います。

■日本の犯罪は増えておらず、少年犯罪は増えていない。
■また、少年犯罪がどれだけ凶悪化しているのかは、わからない。しかし、教師が学生に刺された1998年の黒磯事件や酒鬼薔薇事件などを契機に、マスコミが少年犯罪をセンセーショナルに報じるようになってから、少年がモンスター視されるようになり、少年の犯罪が異常に注目されるようになった。
■一方で、1997年に「少年犯罪被害者当事者の会」が結成されたころから、マスコミは被害者を発見し、加害者側を擁護したり動機を探索したりする視点がなくなっていった。その結果として、世論は被害者の立場や権利を注視するようになり、犯罪を犯したのが少年であっても、おとなと同様の罰をうけるべきだという流れができていった。
■そうした流れをうけて、警察や検察、そして裁判所がマスコミや世論に同調するようになり、数十年も改正されなかった少年法が改正され(2007年11月)、重罰化が進んだ。


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2008年10月21日 (火)

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「死刑」(その2)

さて、今回は死刑を存置すべきか廃止すべきかを考えてみます。

結論を先にいうと、私にはどちらがよいのかわかりません。あいまいで申し訳ありませんが、いろんな情報を得て、さまざまな人の意見を聞けば聞くほど、わからなくなってしまいました。

まず、廃止の立場を検討してみましょう。まっさきに問題となるのは、死刑が国家による合法的な殺人である、という実状です。私は「人権」というあいまいな言葉をあまり信用していないので、死刑を考える際にも人権がどうのとは言いません。それにしても、犯罪者を対象にするにせよ、国家による殺人が合法化されているという点については、疑問視せざるをえません。

現実に冤罪死刑囚がいたわけですから、無実の人が冤罪で国家に合法的に殺される可能性というのは、けっしてゼロではありません。これをショートカットして考えると、ごく普通の人が国家に殺される可能性がある、ということになります。ふだんは他人事として考えがちな死刑ですが、こうして考えてみると、誰もが国家に殺されるのかもしれないという感覚を持つようになります。もちろん、そうならないために警察や検察、そして裁判所があるわけですから、その可能性はかなり低いことはいうまでもありません(しかし、その警察や検察、裁判所が冤罪を生んでいるわけです)。

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2008年10月20日 (月)

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藤井誠二著『重罰化は悪いことなのか』の配本まで、あと5日となりました。せっかくの機会ですから、拙ブログの読者のみなさんとともに、「犯罪」や「罪と罰」などについて考えてみるのもよいかと思いました。不定期になってしまいますが、一応は同書の発売を記念した連載ということで、お付き合いいただければ幸いです。

毎回、「犯罪」や「罪と罰」に関するキーワードを取りあげますので、コメント欄を利用するなどして、よろしければ読者のみなさんのご意見やご感想を聞かせてください。同書の配本後は、本の内容に関する声もお寄せください。いただいたご意見やご感想については、その内容を著者に伝えるとともに、場合によっては著者からのコメントをいただけるように調整してみます。

では、はじめましょうか。第1回目のキーワードは、「死刑」です。

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